久しぶりの雨降り。冷たい雨。出かけたくはなかったのだけれど
空っぽの冷蔵庫が大好きな私の性癖ゆえ、なんにも夕食の材料が
なくて。

しぶしぶ車のエンジンをかけてみたら、今度はなかなか家に帰り
たくなくなってしまった。あちらへぶらぶら。こちらへぶらぶら。
古本屋でものぞいてみようかと足を踏み入れたが最後、はまりこ
んでしまった。ひとりで買い物に出られることはまれなので、丹
念に丹念にあらゆるジャンルをのぞいて回る。

天野忠の「万年」と遠藤イヌの「天井丸い」を購入。両方とも詩
集だ。以前より天野忠という詩人の大ファンなのだが、普通の本
屋に作品が置いてあるのを見たことがない。見つけたときには本
当にうれしかった。何十冊とある詩集の中から気に入ったタイト
ルのものをパラパラとめくってみるが「これを買おう」と思える
ものにはなかなか出合えない。遠藤イヌの詩集の中で「染み」
というタイトルの詩が気に入ったので連れて帰ることにした。

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染み

一瞬だと思います
子猫の死体の匂いを思い出した朝
折り紙の鶴と マイルドセブンの絵
わたしが見る 一瞬なのだと思います
鳩がこちらをじっと見ていたときの姿だとか
どこか知らない女の子の伏せた瞼が
やさしかった事だとか
全てわたしに関わりの無い事だと

いつかあの人のTシャツの袖が
めくれていた事やなんかも
そのままで
とても堪え難いほど
一瞬間 感じるのです
わたしの中に永く残るもの
一瞬の出来事が


発行/杉並けやき出版 発売/星雲者
「天井丸い」遠藤イヌ

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