Unexploded shell
2004年11月22日 母さんは…暗い内に起きる。今日は何ヶ月も前から楽しみにしていたイベントのある日。家族に迷惑を掛けてまで、自分ひとりの楽しみを追い求めてはいけない。きちんとやるべきことをやり、食べるものに困らないように支度をし、快く送り出してもらわなければ…そう思って張り切って起きたんだけれども。
しばらくして長女が起き出してくる。いやなオーラが漂っている。何を言うかと思えば「イケてる友だちと遊びに行くのに、自分の持っている服はダサくてどうしようどうしよう」。
昨日はわたしが夕方から出かけて帰りが深夜だったので、相談する(おねだりする)チャンスがなかったらしい。しばらくぼやきを聞いているうちに、自分が高校生のときのことをとてもリアルに思い出してしまった。わたしも「これぞ!」と思える服を着て出かけたかったんだったよなぁ。母親のコーディネイトなんてくそくらえ、って思ってた。服や身につける小物、髪形、化粧、それらを媒体にして自分を表現する。そんなことが人生の一大事かと思ってたな。
クラスのコとあまりうまくいってない様子の長女。それがクラスの人気者たちに誘われてお出かけするという。今日がわたしのお楽しみデーだなんて、すっかり忘れている。お金をあげるから好きなものを買っていいよと言ってもいい顔をしない。……ものすごく迷ったけど、少し遅れて出てもいいか、と予定を変更した。
新しいロングブーツとコートとスカートに身を包んだ彼女を見送って自宅に戻ると、夫が「今日は行くのやめにしたんだ!」と心底うれしそうな顔をしてわたしを出迎えた。疲れていたんだろか、夫は見ていてちょっと痛々しいほどはしゃいでいて。今から行くの、と言えなかった。今日は羽を伸ばし損ねた。
しばらくして長女が起き出してくる。いやなオーラが漂っている。何を言うかと思えば「イケてる友だちと遊びに行くのに、自分の持っている服はダサくてどうしようどうしよう」。
昨日はわたしが夕方から出かけて帰りが深夜だったので、相談する(おねだりする)チャンスがなかったらしい。しばらくぼやきを聞いているうちに、自分が高校生のときのことをとてもリアルに思い出してしまった。わたしも「これぞ!」と思える服を着て出かけたかったんだったよなぁ。母親のコーディネイトなんてくそくらえ、って思ってた。服や身につける小物、髪形、化粧、それらを媒体にして自分を表現する。そんなことが人生の一大事かと思ってたな。
クラスのコとあまりうまくいってない様子の長女。それがクラスの人気者たちに誘われてお出かけするという。今日がわたしのお楽しみデーだなんて、すっかり忘れている。お金をあげるから好きなものを買っていいよと言ってもいい顔をしない。……ものすごく迷ったけど、少し遅れて出てもいいか、と予定を変更した。
新しいロングブーツとコートとスカートに身を包んだ彼女を見送って自宅に戻ると、夫が「今日は行くのやめにしたんだ!」と心底うれしそうな顔をしてわたしを出迎えた。疲れていたんだろか、夫は見ていてちょっと痛々しいほどはしゃいでいて。今から行くの、と言えなかった。今日は羽を伸ばし損ねた。
ポケットの中身を確認しないで服を洗う。細かくなって洗濯物全体にまんべんなくまぶされた紙の残骸に泣きたくなる。今となってはほとんどこのようなミスをすることはなくなったが、それでも年に1〜2度は衣類以外のものをうっかり洗って痛い目に遭う。これまでの母さん人生の中でいろんなものを洗った。
ティッシュ。
お札(とっても丈夫!感心した)。
紙おむつ(すごい吸水率を実感した)。
メモ類。
名札。
中でも文庫本を一冊洗ったときのことは忘れられない。小さな文字がびっしりと書かれた微細な紙が大量に、そう、鮭フレークがごはんにからまったような状態で洗濯機に入っているのを発見したときには、愛鷹山へ修行に行って当分帰るまいと思ったくらいだ。
洗濯機の中で変わり果てた姿になっていた文庫本は、当時のわたしの長風呂の友だった。日常生活の中で読むとちょっとじれったくなるような本、何度も繰り返して読みたい本を選んで、子どもの寝静まった深夜、浴槽で読むのが好きだった。確かあの頃は100円で買った丸山健二さんと何度も入浴していた。うっかり眠り込んで、自分も本も湯に沈んでしまったので、洗濯機の上にある突っ張り棚に濡れた本を干しておいた。はずだったのだが、なにかの拍子に洗濯機の中に落ちたのだろう。洗ってしまった。
ひとたびそういう事態になってしまったら、できるだけ紙くずを払い、あとは外に干して乾かすしかない。そして乾いたらコロコロクリーナーを駆使して……
新潟で、イラクで、いろんなところで心が痛くなる事件が多すぎて。
気を紛らわせるために関係のない文章を書いたのだけど、やっぱり集中して書くことも、おもしろおかしく書くことも難しい。事件の、災害の、事故のニュースを見ながらごはんをパクつくことに似ている。
ティッシュ。
お札(とっても丈夫!感心した)。
紙おむつ(すごい吸水率を実感した)。
メモ類。
名札。
中でも文庫本を一冊洗ったときのことは忘れられない。小さな文字がびっしりと書かれた微細な紙が大量に、そう、鮭フレークがごはんにからまったような状態で洗濯機に入っているのを発見したときには、愛鷹山へ修行に行って当分帰るまいと思ったくらいだ。
洗濯機の中で変わり果てた姿になっていた文庫本は、当時のわたしの長風呂の友だった。日常生活の中で読むとちょっとじれったくなるような本、何度も繰り返して読みたい本を選んで、子どもの寝静まった深夜、浴槽で読むのが好きだった。確かあの頃は100円で買った丸山健二さんと何度も入浴していた。うっかり眠り込んで、自分も本も湯に沈んでしまったので、洗濯機の上にある突っ張り棚に濡れた本を干しておいた。はずだったのだが、なにかの拍子に洗濯機の中に落ちたのだろう。洗ってしまった。
ひとたびそういう事態になってしまったら、できるだけ紙くずを払い、あとは外に干して乾かすしかない。そして乾いたらコロコロクリーナーを駆使して……
新潟で、イラクで、いろんなところで心が痛くなる事件が多すぎて。
気を紛らわせるために関係のない文章を書いたのだけど、やっぱり集中して書くことも、おもしろおかしく書くことも難しい。事件の、災害の、事故のニュースを見ながらごはんをパクつくことに似ている。
Time flies
2004年10月25日 母さんは…10年ぶりに葛西臨海公園に遊びに行ってみた。チビッコどもは夫が実家に連れ帰っていたので、16才になる長女とふたり、電車に揺られて。
この水族園がとても好きだったわたしたち。本当に何度も何度も遊びに行ったものだった。夫が長女を肩車して魚たちを見せていたこと、体よりも大きなマグロのぬいぐるみを抱きしめて喜んでいたこと、サメをこわがって泣いていたこと、屋外のテーブルで芝生の上で、おひさまを浴びながら笑い合っていたこと。長女が赤ちゃんだった頃から5才頃までの記憶が次々に蘇ってくる。
目の前でもりもりハンバーグを食べている、わたしよりもでっかい彼女。陳腐な言い方だけど本当に夢のよう。まだまだ子どもだけれども、一生わたしの子どもだけれども、でっかくなったねぇ。混んでいる水槽の前でもらくらく魚が見えるんだねぇ。もうぬいぐるみもいらなくなっちゃったんだねぇ。
あっという間。
この水族園がとても好きだったわたしたち。本当に何度も何度も遊びに行ったものだった。夫が長女を肩車して魚たちを見せていたこと、体よりも大きなマグロのぬいぐるみを抱きしめて喜んでいたこと、サメをこわがって泣いていたこと、屋外のテーブルで芝生の上で、おひさまを浴びながら笑い合っていたこと。長女が赤ちゃんだった頃から5才頃までの記憶が次々に蘇ってくる。
目の前でもりもりハンバーグを食べている、わたしよりもでっかい彼女。陳腐な言い方だけど本当に夢のよう。まだまだ子どもだけれども、一生わたしの子どもだけれども、でっかくなったねぇ。混んでいる水槽の前でもらくらく魚が見えるんだねぇ。もうぬいぐるみもいらなくなっちゃったんだねぇ。
あっという間。
もうじき運動会。
今日のまりちゃんの宿題は「虫の声を聴いてくること」。
そういう宿題もたまにはいいね。
毎日毎日暑い中、外で練習を頑張っているから。
ママも子どもも疲れちまってるから。
センセイ、ありがと〜!
今日のまりちゃんの宿題は「虫の声を聴いてくること」。
そういう宿題もたまにはいいね。
毎日毎日暑い中、外で練習を頑張っているから。
ママも子どもも疲れちまってるから。
センセイ、ありがと〜!
昨夜から17日まで夏休みをもらっている。夫が長女以外の娘たちを連れて実家に遊びに行ってくれたのだ。
DVDを流しながらリビングを整理整頓していく。散らかっているものたちにはちゃんと帰る場所があるのだ。薬は薬の引き出しに、工具は工具の引き出しに、本は本棚、髪の毛を結ぶゴムやピンたちはピアノの上のかごの中、洋服はクローゼットへおかえり。エンドロールが流れ始めたら、掃除機をかけてふき掃除をして、部屋はすっかりきれいになった。娘たちが夏休みに入ってからどうも気力がわいてこなかったのは、部屋がきれいになる時間があまりにも少なかったせいかもなぁ。それからひとりきりになる時間があまりにも短くて、排便のタイミングをつかめなかったからかもしれない。ひどい便秘に悩まされていた。
「ご飯はちゃんと食べようね」
「お野菜もちゃんと食べようね」
「アイス食べ過ぎるとおなか壊しちゃうよ」
「目が疲れちゃうからテレビをいっぱい観ちゃダメよ」
「いやだ!あんなに血が出ちゃってこわいね!チャンネル替えようね」
……しようね。……しちゃだめよ。
自分が普段子どもたちに言って聞かせていることの逆をして過ごしている。DVDは観放題。冷たいものは食べ放題。お食事は抜きたい放題。夕闇のせまる部屋で、あかりをつけずに本を読み、太陽が隠れるのを待って外に飛び出す。
母さんはこうしてがみがみロボットからまた人間にもどります。たまにはみんなとテーブル以外の場所で、腹這いになりながらスナック菓子を食べたりとか、たき火を囲んでエッチな話をしたり放送禁止用語を並べて、あなたたちを喜ばせたりもすることでしょう。お休みをありがとう。
DVDを流しながらリビングを整理整頓していく。散らかっているものたちにはちゃんと帰る場所があるのだ。薬は薬の引き出しに、工具は工具の引き出しに、本は本棚、髪の毛を結ぶゴムやピンたちはピアノの上のかごの中、洋服はクローゼットへおかえり。エンドロールが流れ始めたら、掃除機をかけてふき掃除をして、部屋はすっかりきれいになった。娘たちが夏休みに入ってからどうも気力がわいてこなかったのは、部屋がきれいになる時間があまりにも少なかったせいかもなぁ。それからひとりきりになる時間があまりにも短くて、排便のタイミングをつかめなかったからかもしれない。ひどい便秘に悩まされていた。
「ご飯はちゃんと食べようね」
「お野菜もちゃんと食べようね」
「アイス食べ過ぎるとおなか壊しちゃうよ」
「目が疲れちゃうからテレビをいっぱい観ちゃダメよ」
「いやだ!あんなに血が出ちゃってこわいね!チャンネル替えようね」
……しようね。……しちゃだめよ。
自分が普段子どもたちに言って聞かせていることの逆をして過ごしている。DVDは観放題。冷たいものは食べ放題。お食事は抜きたい放題。夕闇のせまる部屋で、あかりをつけずに本を読み、太陽が隠れるのを待って外に飛び出す。
母さんはこうしてがみがみロボットからまた人間にもどります。たまにはみんなとテーブル以外の場所で、腹這いになりながらスナック菓子を食べたりとか、たき火を囲んでエッチな話をしたり放送禁止用語を並べて、あなたたちを喜ばせたりもすることでしょう。お休みをありがとう。
魔法少女ぷにっとさんの書かれた文章を読んで、「あの日」が蘇りました。「あの日」。それはわたしが性教育について深く考えさせられるようになった、そのきっかけの日だったのでございます(岸田今日子風)。
月曜日、子供たちと一緒にカラオケに行く。モニターに映し出されるのは、その歌を歌っている本人のPV。…おぉ!いつの間にこんな風になってたの。
ひとりで出かけた帰り道。匂いに誘われ、☆バクスカフェに入る。注文してお金を払ってラテを受け取る。手慣れていたはずのこの流れを忘れている。品物を受け取るカウンターがわからなくってちょっとまごつく。…かっこわるい、あたし。
順調に流れる人の波に、従順に乗っていけない。まるで本流にいつまでたっても合流できない車のようだ。人ごみを歩いているとしばしば人にぶつかる。もっと上手に自分を転がさなければ。
3〜4年の間、人ごみを避け、リビングやキッチンを中心に暮らし、ほとんど毎日の夕方、おじゃるまるの歌なんかを娘たちと合唱したりして過ごしているうちに、世間に置いていかれちゃったなぁ。そろそろリハビリ、始めましょか。
ひとりで出かけた帰り道。匂いに誘われ、☆バクスカフェに入る。注文してお金を払ってラテを受け取る。手慣れていたはずのこの流れを忘れている。品物を受け取るカウンターがわからなくってちょっとまごつく。…かっこわるい、あたし。
順調に流れる人の波に、従順に乗っていけない。まるで本流にいつまでたっても合流できない車のようだ。人ごみを歩いているとしばしば人にぶつかる。もっと上手に自分を転がさなければ。
3〜4年の間、人ごみを避け、リビングやキッチンを中心に暮らし、ほとんど毎日の夕方、おじゃるまるの歌なんかを娘たちと合唱したりして過ごしているうちに、世間に置いていかれちゃったなぁ。そろそろリハビリ、始めましょか。
広島に行こうか行くまいか少々悩んだが、やはり今回は行かないことにした。夫とムスメ3人は、昨日の夜、車で2時間ほど離れた夫の実家へと出かけていった。
末っ子とわたしとが離ればなれで眠る初めての夜である。いつもよりのんびりと風呂に入る。髪の毛を念入りに乾かし、無伴奏のCDをかけ、枕を二つ重ねうつぶせて桐野夏生の「グロテスク」を読む。
いつもは4,5畳の部屋いっぱいに布団を敷き、ぴったりとくっつきあって眠るチビッコどもとわたし。ナンバー2と3にはちゃんと部屋があり、ベッドにもかわいいカバーをかけてあるのだが、1年ほど前に「ねぇママの部屋にお泊まりさせてよ」とねだられてうっかり泊めたが最後、もう子供部屋では寝なくなってしまった。「ひとりっきりでおもいっきり体をのばして寝てみたいなぁ」と思っていたが、いざ「じゃあやってみな」という状況になるとなんともさみしいもの。今夜はあたし、眠れそうにないわ……確かにそう思ったのだが、ふと気がつくと朝になっていた。
末っ子とわたしとが離ればなれで眠る初めての夜である。いつもよりのんびりと風呂に入る。髪の毛を念入りに乾かし、無伴奏のCDをかけ、枕を二つ重ねうつぶせて桐野夏生の「グロテスク」を読む。
いつもは4,5畳の部屋いっぱいに布団を敷き、ぴったりとくっつきあって眠るチビッコどもとわたし。ナンバー2と3にはちゃんと部屋があり、ベッドにもかわいいカバーをかけてあるのだが、1年ほど前に「ねぇママの部屋にお泊まりさせてよ」とねだられてうっかり泊めたが最後、もう子供部屋では寝なくなってしまった。「ひとりっきりでおもいっきり体をのばして寝てみたいなぁ」と思っていたが、いざ「じゃあやってみな」という状況になるとなんともさみしいもの。今夜はあたし、眠れそうにないわ……確かにそう思ったのだが、ふと気がつくと朝になっていた。
Mother’s eyes
2004年4月10日 母さんは…テレビにラブシーンが映っている時の子供たちの顔がおもしろい。
テレビよりよっぽどおもしろいので、画面を見ずに、みんなの表情を
観察している。ついでに夫の顔も見てみる。恥じらっている様子だ。
ニヤニヤしているわたしを母が見て、さらに笑っている。上には上がいる。
テレビよりよっぽどおもしろいので、画面を見ずに、みんなの表情を
観察している。ついでに夫の顔も見てみる。恥じらっている様子だ。
ニヤニヤしているわたしを母が見て、さらに笑っている。上には上がいる。
あまりテレビを見るほうではない。でも今日は久しぶり
に長い時間テレビに釘付けだ。事情があって会えなく
なった人と人を会わせてあげる、という番組。それから
銀座の有名な双子ママのドキュメンタリー。
妊娠中の彼女を捨てて逃げる男。産まれたばかりの子供
を置いて家を出る親。故郷を遠く離れて親と会えなく
なってしまった娘。病と闘う人。私生児をひとりで産み
支え合いながら生きる双子姉妹。
ありきたりだけれども、本当に人生色々。
昨日はダウン症で産まれてきて6年しか生きられ
なかった「秋雪ちゃん」のドキュメンタリーが放送され
ていた。明治生命の「あなたに会えて本当によかった」
というフレーズを小田和正が歌っているCMで写真が紹
介され、一躍有名になった家族の記録だ。
書くと、ばっかみたいって思われてしまうかもしれない
けれど、最近気がつくと自分の容姿のことで悩んでた。
3人目の子供を産んだ後も、体の線が崩れることを病的
に嫌い、キチンキチンと昔のままの体型を保ってきたの
に、4人目を産んだ後はややおざなりに。気持ちも体も
まろやかになった自分をどこか許せないなぁと思い、
イライラすることが増えていた。
秋雪ちゃんのお母さんは、ひねりのない髪型をして、
眼鏡をかけた化粧気のない人物だった。きれいな顔や
体もしていないけれど、会ったこともない私の心を打ち
のめす言葉を吐き、涙をたくさん流させる。
美しいと評判だった私の母は、38才のときに家族を捨
てて出て行った。原因は私の家庭教師。
来し方行く末を考え込んでしまう夜。
に長い時間テレビに釘付けだ。事情があって会えなく
なった人と人を会わせてあげる、という番組。それから
銀座の有名な双子ママのドキュメンタリー。
妊娠中の彼女を捨てて逃げる男。産まれたばかりの子供
を置いて家を出る親。故郷を遠く離れて親と会えなく
なってしまった娘。病と闘う人。私生児をひとりで産み
支え合いながら生きる双子姉妹。
ありきたりだけれども、本当に人生色々。
昨日はダウン症で産まれてきて6年しか生きられ
なかった「秋雪ちゃん」のドキュメンタリーが放送され
ていた。明治生命の「あなたに会えて本当によかった」
というフレーズを小田和正が歌っているCMで写真が紹
介され、一躍有名になった家族の記録だ。
書くと、ばっかみたいって思われてしまうかもしれない
けれど、最近気がつくと自分の容姿のことで悩んでた。
3人目の子供を産んだ後も、体の線が崩れることを病的
に嫌い、キチンキチンと昔のままの体型を保ってきたの
に、4人目を産んだ後はややおざなりに。気持ちも体も
まろやかになった自分をどこか許せないなぁと思い、
イライラすることが増えていた。
秋雪ちゃんのお母さんは、ひねりのない髪型をして、
眼鏡をかけた化粧気のない人物だった。きれいな顔や
体もしていないけれど、会ったこともない私の心を打ち
のめす言葉を吐き、涙をたくさん流させる。
美しいと評判だった私の母は、38才のときに家族を捨
てて出て行った。原因は私の家庭教師。
来し方行く末を考え込んでしまう夜。