音ヲ発スル

2005年8月28日
音ヲ発スル
7月の終わりに駒場東大前に出向いたのは、二胡を迎えに行くためだった。一年前の夏、体験レッスンを受けてからずっと心のどこかにひっかかっていた二胡。でもなかなかふんぎりがつかなくって。友人に頼んでおいた楽器がなかなか海を渡ってこなかったせいもあるし、新しいことに飛び込む勇気がなかったせいでもある。

なにはともあれ、始めてからひとつきが経ち、どうやらずっと続けていけそうなのでようやく「やってるの…」と白状してみる気になりました。ほとんどが孤独な自己練なんだけど、熱意ある方の主催するサークルに属しており、2週間に一度はレッスンを受けたり全体練習でそろって演奏したりする。とっつきやすいのに奥の深い楽器なので(楽器ってみんなそうか)ゴールなんてどこにもない。誰かと競っているわけじゃないし、うまくならないといけない期限もないから、気は楽なはずなのに、勝ち気な性分ゆえ、わたしは毎日毎日絶対に最低1時間の練習をする。音に心を乗せて風に渡す。名も知らぬ人と同じ音を奏で、言葉もなく見つめ合い、苦笑いしたり、はにかんだり。うつくしい音色が重なり合ったら心からのにっこりを交わし合ったり。そんな何秒かの快楽のためにがんばって練習する。

またサークル主催者がかっこいいんだな!これが!絶対に本人には知られることはないだろうけれど、よこしまな心なく清らかに大好き。お孫さんのいるおじさま(おじいさま?)で、いつもヨレたTシャツと短パンサンダル履き、髪の毛うすく、興奮すると口角に泡つけっぱなし…なんだけど、その目の奥にあるきらめきにどうしようもなく惹きつけられる。夕暮れ時に電気も点けず朗々と音階を踏んでいた姿も、自転車に乗り飄々と風を切る後ろ姿も、弦を押さえる指を「ちがう」と言って厳しく直してくれる温かい手も。

わたしが好きなひとたちは男も女もみんな、瞳の奥にかみ殺したよな愉快を隠しています。真剣な顔して話を聴きながら、わたしはいつもその愉快を探している。誰の顔の中にも。

コメント

最新の日記 一覧

<<  2025年6月  >>
1234567
891011121314
15161718192021
22232425262728
293012345

お気に入り日記の更新

この日記について

日記内を検索